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2021-03
新型コロナウイルスの正体は単なる風邪ウイルスなのか
こんにちは。
KT-11研究員です。
さて、今回は頻繁に質問をいただく内容。
それは、普通の風邪と新型コロナウイルス感染症の違いについて。
最近、新型コロナウイルスが、実は風邪のウイルスと変わらないのでは、なんてことも囁かれています。
そもそも、新型コロナウイルスによる感染症(以下、COVID-19)と風邪の違いは症状にあります。
もっと詳しく言うと、風邪とは上気道が微生物などに感染することによって起こる症状の総称のことで、原因の約90%はウイルスが占めており、残りの約10%は細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどウイルス以外による感染です。また、風邪を引き起こすウイルスの数は200種類以上といわれており、どのウイルスが原因で起こったのかを特定することは困難です。
つまり、風邪とは広義で言うと起因微生物(ウイルスを含む)が不明である上気道などの感染の症状を示し、COVID-19は新型コロナウイルスによる特定の感染症を示しており、この2つを比較すること自体ナンセンスに感じます。
もちろん、風邪の原因ではコロナウイルスの一種による感染も知られています。
引用元
人に対して病原性を示すコロナウイルスは7種類確認されており、普通の風邪を引き起こすコロナウイルスは229E、NL63、OC43、HKU1の4種類です。
また、高い毒性を示したSARSやMERSを引き起こすウイルスもコロナウイルスの仲間です。
これらのコロナウイルスはα型とβ型に分類されますが、新型コロナウイルスであるSARS-Cov2はβ型に属します。
つまり、普通の風邪を引き起こすコロナウイルスのなかでHKU1が新型コロナウイルスに近い性質と言えます。
HKU1単独の感染による致死率は不明ですが、通常の風邪による致死率は極めて低いわけですから、新型コロナウイルスが風邪を引き起こす程度のコロナウイルスと考えることは難しいでしょう(新型コロナウイルスによる致死率は4%前後と言われている)。
また、東海大学の中川先生の研究グループによって新型コロナウイルスの遺伝子レベルでの系統樹が発表されています。
系統樹からも、HKU1と新型コロナウイルスは全くの別ものであり、むしろSARSを引き起こすコロナウイルスに近いことがわかります。
ウイルスは常に変異するものであり、新型コロナウイルスが今後、SARSのように人にとってさらに高毒性を示す変異株となりうる可能性も十分にあります。
変異株の出現が連日報道されているように、今後の動向を注視するべきでしょう。